「空間透明度I」（2010）ビブラフォン、アンティ−ク・シンバルとエレクトロニクスの為の

　　ネイト・ペーゲル（ヴィデオ）

この作品は、今年コンサートの為に訪れたメキシコで、メキシコ人建築家のルイス・バラガンの自邸を訪れてインスピレーションを受けたことに基づいている。バラガン邸は、メキシコ市内にあふれるメキシカンピンクを生かした壁の色、空中に浮かんでいるかのように見える不思議な階段をはじめ、画期的な色遣い、空間配置がされており、天井には一切電気はついておらず太陽光にこだわり、計算尽くされた窓の場所、大きさによって、微妙な光、影が空間を作り出すように設計されている。まるで迷宮のようにそれぞれの部屋は繋がっている。次の部屋に入るたびに新たな発見があり、また、それぞれの部屋との関係をもっている。バラガンは、「建築は、内側から考えるべきです。」と言っている。外から見ただけでは想像のつかない彼の精神世界が、建築物の内部に創造されているかのようである。私は、彼の建築空間を音楽空間のように、作曲と建築とのつながりを感じた。

　ビブラフォン、アンティ−ク・シンバル、加藤さんに録音協力をしていただいたベルタイプの打楽器音サンプルを加工したエレクトロニクス音を含んだ全てメタリックな音を使っている。それらの音で、バラガン邸から感じ取った色、光、空間を音響空間に創造しようと試みた。

　

　また、映像は、アメリカ人メデイア・アーテイストのネイト・ペーゲル氏が制作して下さった。今までに、「東京メトロ」アルトサックスとエレクトロニクスの為の「見えない環」の２作品でコラボレーションを行っている。

　今回のコンサートでは、加藤さんのライブ演奏のダイナミクスのデータにより、Max/jitterを使用して、ペーゲル氏の映像作品上に光の効果を加えるようにプログラミングしてある。（伊藤美由紀）

　カパサタール・ダンスカンパニーと「バイオーム」という作品の為に仕事をした際、彼らのデザインした金属製の彫刻を使用した曲芸的な振り付けをみて、インスピレーションを得た。この彫刻のオブジェを使用したパフォーマンスを何もないスタジオで撮影した。そのヴィデオを平面的なものと立体的なものにすることで、新たな振り付けを試みた。スピードを変えたり、逆回転をしたり、回転させることで重力に反抗させることによりヴィデオを編集している。ヴィデオを使って新たな振り付けを探求することに関心があった。（ネイト・ペーゲル）

（プログラムノートより）

This is a piece for vibraphone and crotales for one percussiob player with electronics.  The sound files will be triggered by Max/msp by a composer, following a performance.  It is created for 2 channels.  All sound files are created by sounds of vibraphone and bells, focusing on metallic sounds.  The video was created by Nate Pagel, media artist in the US.  In the premier concert in Japan, it was performed with video.  However, the music can be performed without video.  I got the inspiration from Mexican architect, Luis Baragan for this piece.  I tried to create his idea with light, color and space with my music.